D36IgHh

210: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2020/12/23(水) 09:11:16.75 ID:9BgAr+gT
2、しずく
3、かすみ
5、愛
7、エマ
9、遥
0、侑


>>211 キャラクターセレクト(上の1~0からのみ)
>>212 内容選択(自由)

※注意事項
全て彼方との組み合わせ

211: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/12/23(水) 09:15:58.96 ID:le+GSV/Y

212: 名無しで叶える物語(わんこそば) 2020/12/23(水) 09:24:09.32 ID:Fooa+7gb
クリスマスデート

213: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 09:51:43.88 ID:9BgAr+gT
吐く息も白くなる12月下旬

同好会での練習も終えて、途中までは一緒だからと……侑ちゃんと一緒に並んで歩く

彼方「今年は雪、降るかなぁ?」

侑「どうかな……ここ数年、積もるほどじゃないのも含めれば」

侑「東京でも雪は降ってるって言えるだろうから」

彼方「そうだねぇ……」

空を見上げてみれば、雲一つない夜空が見える。

放課後、部活の練習を終えた後はもうすっかり暗い。

侑「……クリスマス、雪降って欲しいですか?」

彼方「その質問は狡いよ~」

彼方「侑ちゃんはどうなの~? 降って欲しい? 欲しくない~?」

侑「そうだなぁ……私は、降って欲しいかな」

侑「だってその方が、素敵なクリスマスになりそうじゃないですかっ!」

214: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 10:00:47.22 ID:9BgAr+gT
侑ちゃんは私の隣から躍り出て、くるりと回る

左右に結ばれた小さな尻尾が揺れるように髪が靡いて、

子供っぽい、可愛い笑顔が輝く

侑「雪が降っても、降らなくても……思い出にはなる」

侑「さらにそこに " 偶然 " が重なったら嬉しい」

侑「私と彼方さんではどうにもならない天から、小さな雪が降るホワイトクリスマス」

侑「それってなんだか、神様から祝福されているようで……すっごく、ときめかない?」

彼方「神様からの祝福かぁ……」

彼方「そうだねぇ……ドキドキするよ~」

侑「だから、私は雪が降って欲しいかなっ」

彼方「うん~……彼方ちゃんも、雪が降ったらいいな~……」

215: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 10:09:55.89 ID:9BgAr+gT
侑「……はぁーっ……」

侑「寒い……」

侑「彼方さん、手……繋ごうよっ」

息を吹きかけて、

すりすりと合わせた侑ちゃんのほんのりと赤らんだ小さな手

伸ばされたそれを、受け取って。

侑「彼方さんの手、あったかい……」

彼方「手袋してるからねぇ~」

侑「……えいっ」

彼方「ひゃぁっ!?」

手袋の袖口から強引に入り込んでくる冷え込んだ侑ちゃんの手

小さいから、どうにかこうにか入り込んできたそれは、

外の空気に当てられていて。

彼方「侑ちゃんの手、冷た~い」

侑「すぐあったかくなるよ~……」

一つの手袋の中で手と手を触れ合わせて……握る

その分距離が縮まって、

肩を触れさせながら……ゆっくり、夜道を歩く

216: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 10:24:20.85 ID:9BgAr+gT
侑「……クリスマス、楽しみだなぁ」

彼方「そうだねぇ~」

もう明後日に迫ったクリスマス

何日も前から、こうしよう、ああしよう

そんなことを一緒に考えて、

一人でこっそり、こんなことしようと考えたクリスマス

侑ちゃんは、想いを馳せて……目を輝かせてる

そんなところが……かわいい

彼方「……去年までは、歩夢ちゃんとだったんだよね?」

侑「歩夢とっていうか、家族で……かな」

侑「二人で出かけることもあったけど……」

侑「……歩夢には、ちょっと悪いことをしちゃったかな」

217: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 10:34:32.40 ID:9BgAr+gT
去年の侑ちゃんはまだ私を知らなくて

普通に、来年……今年もまた歩夢ちゃんとクリスマスを過ごす予定だったらしい。

でも、私と一緒になって、二人で過ごしたいってなって。

その、去年の約束を破るようになったことが、少し申し訳ないと侑ちゃんは小さく笑う

侑「……こんなこと、彼方さんに言うのも申し訳ないけど」

彼方「ううん、侑ちゃんは頑張ってくれたよ」

同好会の中で、歩夢ちゃんにだけはしっかりとお話をした。

驚いて、悲しんで……でも、侑ちゃんが選んだならって

祝福してくれた歩夢ちゃん。

本当なら侑ちゃんと過ごすはずだった時間を、奪っちゃった私。

彼方「……ちゃんと、しないといけないことだから」

侑「遥ちゃん、喜んでくれてたよね」

彼方「うん……少しずつ姉離れ妹離れできるように頑張ろうねって言ってた」

出来るかは……不安だけど。

そこは誠心誠意努力中ということで。

218: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 10:57:51.92 ID:9BgAr+gT
侑「……予定はあれで良いんだよね?」

侑「お昼食べてから集合、ジョイポリスで軽く遊んで……ウインドウショッピング」

侑「そのあとご飯食べて……観覧車」

彼方「割としっかり決めちゃったよねぇ」

彼方「もうちょっと、遊びがあっても良かったかな~?」

侑「ん~……予約にさえ間に合えば大丈夫だと思う」

ディナーの予約……ちょっと割高だけど

せっかくだからと奮発して。

大観覧車は乗れたら乗るけど……多分難しい

外から見るだけでもきれいだから、それでもいい。

彼方「じゃぁ、当日歩きながらまた決めよ~?」

侑「うんっ」

もう少しで別々の道に行く

それが互いに分かってるから……少しだけ、繋ぐ手に力が籠る

歩幅が小さく、ゆっくりになっていくのは……気のせいじゃない

219: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 11:24:13.59 ID:9BgAr+gT
――――――
―――

クリスマス当日

日に日に街中に増え始めたように感じる二人組が、

より一層距離を近く……数を増したように感じられる今日

予定よりも1時間くらい早く集合場所にたどり着く

彼方「………」

家にある少ない私服のレパートリーの中から

めいいっぱいにおしゃれな服を選んだつもりだけど

かわいいか、綺麗か

自分では迷いに迷って分からない

遥ちゃんは可愛いというよりも綺麗な感じだと言ってくれたけど。

まだ何も始まっていないのに、早鐘を打つ心臓を抑えるために深呼吸

小さめのトートバッグの中、小包みを覗く

侑ちゃんの為に、頑張って……喜んでくれるか、不安がいっぱい

220: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 11:31:33.71 ID:9BgAr+gT
彼方「はぁ……」

何度深呼吸をしても心が落ち着かない

ドキドキして、ざわざわして……

溜息をついてみても、それはやっぱり変わらない。

右手首につけた、小さな腕時計

チェーンベルトで、

ブレスレットのようにも見える腕時計はデジタル表記のない文字盤のみ。

時間を確認して顔を上げると……陽の光を遮る影がかかった

彼方「えっ、あっ……あのっ……」

ここに来てからかれこれ十数分

待ちぼうけを喰らってるとでも思われたのか……お誘いしてくる男の人

大学生だと思われたのはちょっぴり嬉しいけれど……

彼方「すみませんっ、私……約束があって……」

221: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 11:40:58.55 ID:9BgAr+gT
迷う必要も何もないので、お断り。

でも、ずっと待ってるよね? という引き留めの言葉

彼方「早く着た私が悪いだけなので……」

本当に、そう。

一人で舞い上がって、いつもよりずっと早く起きて

家のことをやっても時間を余らせた挙句……1時間早い到着。

だから侑ちゃんは何も悪くない

けど……

相手とテンションの差があると辛いよ? と言う囁きにはドキッとさせられる

侑ちゃんはそれほどじゃなくて、自分だけがそうなんじゃないかって。

彼方「わ――」

侑「彼方さ~ん!」

彼方「あっ……」

一目散に駆け寄ってくる、侑ちゃん

冬なのに、汗をかいてる侑ちゃんは慌ただしく息を切らして……

侑「も~早すぎですよ……待ちきれなくて家に行ったらもうだいぶ前に家を出たって……」

侑「これでも集合30分前なのに……」

222: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 11:49:22.09 ID:9BgAr+gT
侑「予定より早いけど、揃っちゃったし行っちゃお~」

彼方「わっ……ととっ……」

侑ちゃんに手を取られて……引っ張られる。

侑ちゃんがこんなに早く来てくれたこととか

家にまで行ってくれていたこととか、

私に話しかけてきていた人が、女の子二人なら――って声かけてきてるのを無視する侑ちゃんとか

色々と。

戸惑う私が躓きそうになると、侑ちゃんは体を寄せてきて……助けてくれる。

侑「ダメだよ……早く来たなら早く来ちゃったって連絡くれないと」

侑「私なんて、早すぎたら驚かせちゃうかなって20分前くらいにしようかなって抑えてたのに」

彼方「……それでも我慢できなくて、家に行ったの~?」

侑「だって……少しでも長く楽しみたいから」

それなのに、家に言ったらもう家を出たって言われるし……なんて、

侑ちゃんはさっきと同じような言葉を繰り返して。

侑「ほんと、ダメだよ……? 彼方さん、今すっごい綺麗な格好してるんだから」

侑「一人で立ってたらナンパされちゃうよ?」

彼方「……うん、ごめんねぇ……」

223: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 11:54:48.75 ID:9BgAr+gT
侑「でも良かったっ」

彼方「え~?」

侑「私だけ先走ってたらどうしようって不安だったんだ……」

侑「彼方さんも同じくらい楽しみにしててくれたみたいで、嬉しいっ」

侑ちゃんは、私が不安になったことをそのままかき消してしまうような笑顔を浮かべる。

同じようにドキドキしてて

同じように不安になって

でも、それが同じだったからと安堵して喜ぶ侑ちゃんの小さな手は……大きく感じる

彼方「私も……嬉しい」

侑「………」

手を握る力が強くなって、

腕はだんだんと伸びなくなって、侑ちゃんが隣に並んで身体を寄せてくる

侑「彼方さん、今日はすっごくきれいだね……」

侑「大人みたいで……かっこいい」

侑「……私、釣り合ってないかも」

224: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 12:03:47.73 ID:9BgAr+gT
彼方「そんなことないよ~」

彼方「普段よりもかわいい恰好で、似合ってるし」

彼方「私が釣り合ってないんじゃないか~って感じだよ~」

侑「えへへ~そうかな~?」

侑ちゃんの声は、ちょっぴり高くなってて……可愛らしい

嬉しさが滲む体は温かくて、ちょっぴり紅い

侑「……普段はボーイッシュファッションがメインだから、全然違って見えるでしょ?」

彼方「うん」

侑「どっちの方が良かった?」

侑「かっこいい系と可愛い系」

どっちでも侑ちゃんは可愛いっていうのは、

たぶん今は求められてなさそう。

彼方「そうだなぁ……」

彼方「普段と違った侑ちゃんが見られるから、今回のも良いよ~」

彼方「私だって……気合い入れちゃって……普段とは変わっちゃったからねぇ~」

侑「彼方さんは、普段も可愛いし綺麗だよ?」

侑「まぁ、今日は一際美人だから……確かに気合を感じるけどねっ」

225: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 13:10:08.58 ID:9BgAr+gT
彼方「も~美人って言い過ぎだよ~」

侑「だって美人なんだもん」

彼方「侑ちゃんだって可愛いよ~?」

侑「え~?」

彼方「かわいいよ~」

侑「えへへ~っ」

寒さを言い訳に互いの距離を詰めて、体を密着させる

からかう言葉への反抗をするかのように、

互いに体を圧し合って……ぽかぽかしていくのが、心地いい

侑「彼方さん……さっきナンパされてたよね」

彼方「えっ?」

今更? なんて、

驚く私の手を握る力が、強くなる

侑「今日はもう、手も目も離さないよっ」

彼方「侑ちゃんだって……一人にしたら連れていかれちゃいそうだから」

彼方「離さないからね~」

握り返して……笑い合う。

アウターがいらなくなりそうなくらいの熱を感じながら、

吐息が白む町の中を、二人で歩く。

今日は……クリスマスデートの日

226: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 16:53:55.83 ID:9BgAr+gT
――――――
―――

私たちのように……というわけではないけれど

二人組や、それ以上のグループで来てる人も多く……人で賑わうジョイポリス

人ごみに紛れて消えてしまわないようにと

より一層握り合わせる手に力を籠める

侑「……思ってた以上に混んでる」

彼方「そうだねぇ……」

愛ちゃん達とくるときにいつもやってるというVRゲームは、

当然ながら当日券があるわけはなく

2人ということで予約もしてなかったので……今日はパス

彼方「侑ちゃん、こっちこっち~」

ジョイポリスに行くならと

予め個人的に決めていたアトラクションの方に、侑ちゃんの手を引っ張る

階段を上がって2階

私のやりたいトラクション……

彼方「これこれ~」

侑「わぁぁ……」

227: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 17:29:56.50 ID:9BgAr+gT
絶叫轟くアトラクションは、

激しく回転する、スピード感のあるアトラクション

私もやるのは初めてだからどんなものかは分からないけど……

でも、こういうの好きなんだよねぇ

彼方「侑ちゃん乗り物酔いとか平気?」

侑「えぇっと……多分」

彼方「じゃぁやってみよ~」

侑「彼方さんって、こういう絶叫系が好きなんですか?」

彼方「絶叫というか、こういう早そうなの好きなんだ~」

侑「なるほど……」

侑「彼方さん、車の免許ってとる予定ありますか?」

彼方「ん~……取れたらいいなとは思うけど」

彼方「今のところ、その予定はないよ~」

侑「そっか~」

侑ちゃんはなぜか安堵したように胸をなでおろした

228: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 17:48:02.54 ID:9BgAr+gT
普段よりも多くの人たちが集まってきているということもあって、

ちょっぴり長い待ち時間の後、

軽い注意事項などの説明を受けてから、いざ乗り込む

彼方「……侑ちゃん大丈夫そう~?」

侑「だ、大丈夫。大丈夫」

私達の番になるまで、たくさんの人を叫ばせた乗り物

見ているだけでもそれなりに激しく動いているように見えたそれは、

乗り込むと……少しだけ不安定さを感じさせる

もちろん、大丈夫なのは分かってるけど。

侑「彼方さん……これ終わったら、少し休――」

スタートの合図が出て……一斉に動き出す。

侑「ぉ……ぁっ……わっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

あいさつ程度の一回転、そこからすぐに二回転

後ろから聞こえてくる侑ちゃんの悲鳴は、かわいいけれど……

二周目は無しかな……と、考えながら、もうひと回転

侑ちゃんの叫び声は、終わるまで続く

229: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 17:56:56.24 ID:9BgAr+gT
侑「彼方さんわざと回転させる動きを……」

彼方「あはははっ、ごめんねぇ……ついつい」

2階に休憩スペースが見当たらなくて、

1階に下りてから休憩スペースを探して腰かける

自販機で適当な飲み物を買って、ひと呼吸

一応レースゲームだったあのアトラクションは、

私の度重なる誤操作……で、びりにはならなかったものの、

1位にもなれなかった。

彼方「回転するのが面白くてね~」

彼方「侑ちゃん、吐きそう?」

侑「それは大丈夫だけど……くらくらする」

彼方「ごめんね」

侑「ううん、彼方さんが楽しめたならよかった」

侑「普段の彼方さんとは全然違う、すっごくはしゃいでる感じがして……私も嬉しかった」

侑「でも、もうちょっと休憩したい」

230: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/23(水) 19:39:25.58 ID:9BgAr+gT
ゆっくり休憩した後、

すぐそばにあった探検型のアトラクションに参加して、

出てくる暗号などを、侑ちゃんと一緒に解いて……

ちょっぴり難しいような悩ましい問題を解けたら手を取り合って大はしゃぎしたりしながら、

探し当てたアイテムは偽物で……でも、

小さな冒険のような思い出は幸せで……侑ちゃんと次は正解を引き当てようって約束したり。

アトラクションのコーナーに隣接するプリントシールを撮って

侑ちゃんは私を、私は侑ちゃんを、

唇や目……顔を大幅に持ったりして

その完成図で笑ったり。

ちゃんとした1枚は、スマホで撮影して……普段は使わない二枚目の壁紙に設定したり。

暫く、ジョイポリスを楽しんだ

231: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2020/12/23(水) 19:43:15.24 ID:9BgAr+gT
続きは明日

232: 名無しで叶える物語(もなむす) 2020/12/23(水) 19:50:23.26 ID:r1SbLXQE
さいこー

233: 名無しで叶える物語(茸) 2020/12/23(水) 20:26:06.93 ID:QOEITPZv
レス無いが見てるから安心して続けてくれ
彼方でも希少なのにあゆかな、ななかな、ゆうかなとかヤバすぎる

234: 名無しで叶える物語(おにぎり) 2020/12/23(水) 20:48:15.04 ID:s8cdjMb8
ゆうかなデートにやにやする

235: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/12/23(水) 21:25:01.53 ID:5y7QIxwf
この文章の雰囲気柔らかくて大好き

236: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/12/23(水) 21:52:48.69 ID:scBnh1wI
ゆうかな貴重すぎる とても良い

237: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/12/24(木) 09:13:32.02 ID:+N7oSM9P
終わってからで良いから過去SS知りたい

238: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/24(木) 22:39:43.51 ID:/teAu+ev
――――――
―――

侑「ほわぁ……」

彼方「あはははっほわぁって何~?」

侑「寒い外からあったかい所に来たら声も出ちゃうよっ」

ちょっぴり恥じらって赤くなっている侑ちゃんの言い訳

でも、その気持ちは分かる

ジョイポリスは熱気に包まれていて暖かかったけれど、

外はその分、とても寒く感じる

中から外、そしてまた中

アクアシティは広々としているけれど

外の寒さを忘れられるくらいには暖かくて……

それは多分、湯船に浸かった気分になれるんだと思う。

彼方「あはは――ひゃぁっ!?」

239: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/24(木) 22:55:01.50 ID:/teAu+ev
ずっと繋いでいてあったかい手のひらと、

繋いでいなかった冷たい手のひらが私の両頬を挟み込んで……思わず悲鳴が漏れる

侑「笑うならこうだーっ!」

彼方「侑ひゃ……ゆ……ひゅっ……」

挟まれて、押し揉まれて

言葉はまともに発することも出来なくて……

侑ちゃんはそれを笑いながら、続ける

彼方「~っ!」

その手を掴んで。

彼方「っは……見られてる……見られてるからぁ……っ」

近くのお店の店員さん、歩いているお客さん。

じーっと見つめてるわけじゃないけど、

ちらちらと感じる視線に侑ちゃんもようやく気付いて……今度は耳までたっぷり紅化粧

……かわいいけど。

私も同じことになってそう……うぅぅ……

240: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/24(木) 23:29:17.09 ID:/teAu+ev
注目を浴びた1階から逃げるようにエスカレーターを上がって、

ファッション系の店舗が立ち並ぶ階に紛れ込む

彼方「侑ちゃん侑ちゃん、眼鏡かけてみて~」

侑「え~?」

せつ菜ちゃんはかけてるけど……

あれは菜々ちゃんの時だからカウントしない。

そうなると同好会の中では眼鏡をかけている子はいないし……。

だから、ちょっとだけ。

彼方「マネージャーって、眼鏡かけてるイメージあるんだよねぇ」

特にないけど。

でも、侑ちゃんがかけたら……かわいいはず。

彼方「侑ちゃん、眼鏡似合いそう~」

侑「そうかな~?」

241: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/24(木) 23:52:29.50 ID:/teAu+ev
侑ちゃんは展示されてるサンプルの一つを手に取って、

鏡を使ってかけてみる。

細めなものの、丸く一周した縁の眼鏡は侑ちゃんの元々小さな顔にはちょっぴり大きい

侑「どう~?」

侑「なんか、眼鏡が無駄に大きく見えないかな?」

彼方「ん~……」

彼方「こっちの底縁の方かけてみて」

侑「良いよ~……」

侑「どう?」

全体的に縁がある眼鏡だと、

侑ちゃんの顔には少し、合わないように見える

242: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 00:02:28.63 ID:fc0dsJpx
私の好み……かな?

彼方「あ~いいかも」

彼方「縁が太いのよりは、細い方が良いかもねぇ」

侑「あっ……この三角形のは?」

彼方「え~?」

侑「似合うザマス?」

彼方「ふっ……ふふふふっ……」

三角形の眼鏡はフレームまでワインレッド

レンズも濃いめのサングラスのような色合いで……

それをかけて小首をかしげて見せる侑ちゃんは……かわいくて

でも、その不釣り合いなのに似合っているようにも感じられる絶妙さが面白くて

どうにか堪えても……笑えてくる

彼方「似合うっ……似合ってるよ……っ」

侑「近江さん? 何がおかしいザマスか?」

彼方「あっはっ……はっ……ゆ、侑ちゃん……っ!」

彼方「だめっ……それ以上変な声出さないでっ」

侑ちゃんの追撃に零れ落ちる笑いを飲み込みながら、眼鏡を奪う

いつもよりも2段階ほど高い声が妙に合ってたのがお腹に痛かった。

243: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 00:16:41.02 ID:fc0dsJpx
侑「彼方さんも眼鏡かけてみてよ」

侑「例えば……ん~……」

侑「これとか」

楕円形で細めのメタルフレーム

光沢感は控えめで、薄紫色なのがほんのりオシャレな感じがする

彼方「……どう?」

侑「なんか、いつにもまして大人しそうな感じがする」

彼方「地味?」

侑「……あははっ、えぇっと、この半フレのはどうかな」

侑「上半フレだから……あ~……」

侑「下フレの方が良いかも……」

彼方「両方かけてみるね~」

244: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 00:50:06.49 ID:fc0dsJpx
3つ、4つと

いくつもの眼鏡をかけ替えて、侑ちゃんと見せ合いっこ

私も侑ちゃんも普段から眼鏡をしていないせいか、

どんな眼鏡をかけても違和感があって、

でも、似合いそうなものもあったりして。

侑「伊達眼鏡とか、つけて慣らしたら……不自然じゃなくなるかな?」

彼方「そうだねぇ……でも、普通に似合いそうなのもあったよ~?」

侑「えへへ~そうですか~?」

侑「彼方さんも、高校卒業したら眼鏡……」

侑「……やっぱり、ダメ」

侑「彼方さんはかけない方が可愛いよ」

侑ちゃんは一瞬悩んだかと思えば、

私の手の中にあった眼鏡を奪い取って棚に戻すと……手を引っ張る

彼方「侑ちゃん……?」

245: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 01:14:55.92 ID:fc0dsJpx
彼方「侑ちゃん……どうかした?」

侑「………」

追いつけないほどではないけど

さっきまでよりは早歩きな侑ちゃんの手を引っ張る

2、3歩進んでから止まった侑ちゃんは私の手を握る力を少し強めて

侑「……どうもしてないよ」

侑「ただ、自滅しちゃっただけ……」

侑「分かってたし、覚悟もしてる」

侑「でもさ……彼方さんが卒業しちゃうって、あんまり。ね?」

侑「……それに、それから眼鏡かけ始めたら」

侑「大人な彼方さんを一番見られるのは私じゃないから……」

侑「……えへへへっ」

困ったものだよね。なんて。

自嘲を込めたような笑顔を浮かべて見せた侑ちゃんは

照れくさそうに頬を指で掻く

侑「……嫉妬しちゃった」

……かわいい。

246: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2020/12/25(金) 01:15:27.66 ID:fc0dsJpx
続きは明日
明日で侑デート終了予定

247: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/12/25(金) 03:29:22.31 ID:1y5kGF4z
なんだろうなー、早く次のcaseも見たいのにこのcaseが終わらないでほしい
9つ全て永遠にやってほしい

248: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/12/25(金) 13:26:52.72 ID:4uoM0FFY
こんなにいいSS書けて誇らしくないの?
最高だよ

249: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 14:17:30.25 ID:fc0dsJpx
彼方「嫉妬しちゃったか~……」

侑「うん……無理に引っ張っちゃってごめん」

彼方「ううん、それは大丈夫だよ~」

そんなに、力強くなかったから。

なんて……言っちゃうと侑ちゃんはむっとするけど。

彼方「それはそれとして、侑ちゃんは分かってないな~」

侑「分かってない……?」

侑「何が分かってないの?」

彼方「侑ちゃんが私に会えないってことは」

彼方「私も侑ちゃんに会えないってこと……」

彼方「寂しくなるのは、侑ちゃんだけじゃないんだよ~?」

侑「あっ……」

施設内の暖房以上に、顔が熱くなっちゃうけど

でも、言っておくべきだと思って、

知っておいてほしくて

……抱きしめるわけにもいかないから、握り合う手の力を強くする

そして……おまけのように嫌味を添えてみたり。

彼方「もぅ……鈍いんだから~」

250: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 15:14:25.85 ID:fc0dsJpx
侑「彼方さん……っ」

嬉しいような

恥ずかしいような

混ざり合った可愛らしい表情を見せてくれる侑ちゃんは

口元をもごもごとさせて……小さく笑った

侑「そう、だよねっ」

侑「ごめんなさい……」

彼方「良いよ~許してあげる~」

侑「ありがと~……」

手を引き合って、

身体を寄せ合って

彼方「彼方ちゃんも嫉妬しようかな~」

侑「ん~嫉妬させられるかな……」

彼方「じゃぁじゃぁ、もうほかの子と話しちゃダメ~」

侑「えーっ」

彼方「あははっ」

喧嘩にすらなっていなかった、話を終わらせる

251: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 15:37:34.36 ID:fc0dsJpx
お洋服とか、財布や鞄。

今でも十分手の届くものから、今はまだ絶対に手を出せないようなアクセサリー

クリスマスの賑やかさに紛れて、

いろんなものを見て回る

これが可愛い、これがおしゃれ、これが綺麗

――いつか、こんなものを身に着けてみたい。

そんな想いを抱いてみたりしちゃって。

それらよりも高いブランド物があるって話に、あ然として。

数年、十数年

それくらいあれば手を出せるようになるかも。なんて夢を見て見る。

侑「……凄かったね」

彼方「うん~……きらきらしてたねぇ」

彼方「侑ちゃんも、やっぱりああいうのが贈られたい?」

侑「いつか贈られたいって思うけど……いつかでいいかなぁ?」

侑「まずは、そういうのが似合う女になりたいね」

252: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 16:50:22.77 ID:fc0dsJpx
もし、その時が来たら何を贈ればいいんだろう

指輪も、ネックレスも、イヤリングとかだって

侑ちゃんはどれも喜んで受け取ってくれる気がする……

侑「そろそろ予約の時間かな?」

彼方「あぁ、そうだねぇ~」

彼方「行こっか、侑ちゃん」

それは、これから考えていけばいい

そう思って侑ちゃんの手を引くと

小さな体は応えて……引かれてくれる

侑「お酒は飲めないけど……今夜だけは、ちょっとだけ大人の仲間入りだね」

彼方「うん~、大人らしく……堂々としてようね~」

侑「ライブとどっちが緊張する?」

彼方「ん~……こっち。かな~」

大人が入っていく、ちょっぴりいいレストラン

まだ高校生の私達には不釣り合いにも思えるけれど、堂々と。

彼方「あの……予約した近江です」

ドキドキして、震える声

侑ちゃんと手を繋いで誤魔化して。

門前払いされないことに……二人でそっと胸をなでおろす

253: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 16:59:24.93 ID:fc0dsJpx
店内は、床も壁も天井も……テーブルも。

クリスマスのための煌びやかさがあるのかと思えば、控えめで

けれど、季節を感じさせる穏やかなおしゃれさに包まれている。

案内された座席は窓際で、

比較的高い位置にあるこのレストランから見える夜景は、それこそ……煌びやかだった。

侑「わぁ……きれい……」

彼方「そうだね~……侑ちゃんの方が綺麗だよ~?」

彼方「な~んて」

侑「えへへっ、冗談じゃなくすにはもうちょっと時間が必要かな?」

心から喜んでくれている侑ちゃんの笑顔は……まだ、かわいい

これがいつか、綺麗になるのか。

可愛くも綺麗な笑顔になっていくのか。

……楽しみになってきちゃう

侑「でも、彼方さんはきれいだよ」

侑「すっごく……本当に大人っぽくて素敵」

254: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 17:20:34.97 ID:fc0dsJpx
羨望を感じる侑ちゃんの視線

嬉しいけど、恥ずかしい

顔が熱くなって……思わず目を逸らしちゃう

侑「……照れて赤くなっていく彼方さんは、可愛いよ」

彼方「侑ちゃんってば~……も~……」

侑「ほんとに、かわいいんだけどな~」

からかっているようにも聞こえるのに、

本心だって分かる侑ちゃんの声は、私の心にまで届く

だから……嬉しくて、ポカポカして感じる

――あぁ、好き

彼方「侑ちゃんだって可愛いんだよ~?」

侑「彼方さんには負けちゃうかな~」

彼方「そんなことないよ~」

侑「あるよ~」

彼方「ないよ~」

侑「あ~る~」

彼方「な~い~」

255: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 17:40:22.93 ID:fc0dsJpx
立派なお店で子供みたいな言い合い。

ううん、褒め合い。

お店の人が食事を運んでくるのが見えて……休戦

侑「……わぁ……」

彼方「盛り付けもおしゃれだね~」

お店のロゴが入っている綺麗な白いお皿に盛られたクリームパスタ

艶々と瑞々しさを感じさせるクリームは、

ほんのりと甘いような匂いがあって……食欲をそそらせる

侑「写真……とりたいけど、ちょっとあれかな?」

彼方「えへへ~そうだね~」

お店の風情には合わないかなと、二人で記念撮影は断念する

でも、十分いい思い出にはなってくれそう

侑「……いただきます」

彼方「いただきます」

小さく、控えめにいただきます。

音を立てないようにフォークとスプーンを手に取る

256: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 17:50:17.50 ID:fc0dsJpx
スプーンの中に納まる程度の量をフォークに絡めて、

スプーンで受けるように巻き込んでいく

彼方「……んっ」

深みのある濃厚なミルクの味わい

溶け込んだスパイスのちょっとした刺激

彼方「美味しい……」

侑「こっちも、美味しいよっ」

侑「ぁ~……っと……はしたないか……」

自分のフォークで巻き取って私の方に差し出そうとしてくれた侑ちゃんは、

照れくさそうにはにかむと、その一口は自分の口に入れる。

彼方「……お皿、一瞬だけ交換しよ~?」

侑「うんっ」

周りの人や、

店員さんにはバレないように。

そんな、無駄な警戒をしながら……お皿をこっそり交換し合う。

学校でのお昼

何気なくやってるひと口だけの交換も、ここでは大人っぽく? スマートに。

なんて。

257: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 18:17:34.32 ID:fc0dsJpx
お店と料理のように、食事もオシャレに優雅に

そんな気分で、侑ちゃんと食事をしながら、

時々、綺麗な夜景を眺めて……非日常な時間を楽しむ

侑「……こんな気分でお酒を飲めたらもっと幸せな気分になれるのかな?」

彼方「どうだろうねぇ~」

お店の人にお願いして、シャンパングラスにソフトドリンクな私達

はたから見れば、ワインかシャンパンでも嗜んでいるように見えるのかな。なんて、ドキドキする

侑ちゃんの頬が赤いのは、酔ってるからではなくて。

私と、二人……見つめ合ってるから。

そんなことを考えて……私まで赤くなってしまう。

彼方「……侑ちゃん、今はすっごくきれいに見えるよ」

侑「お酒を飲むのが、綺麗に見える近道?」

彼方「まっさか~……」

彼方「雰囲気だよ。雰囲気……そう、そういう気分なのかも」

午前零時に解けてしまうシンデレラの魔法

でもこれは、

この想いが続く限り永遠に解けることのない……脆くて強い、心の魔法

侑「……彼方さん、これ。貰ってくれる?」

浸る私を引き戻す侑ちゃんの声

テーブルの上に差し出された小さな手の上には……気品を感じる箱が一つ置かれていた

258: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 18:35:11.48 ID:fc0dsJpx
彼方「えっ……ゆ、侑ちゃん……?」

侑「……開けてみて」

送り合うことを約束したわけでもない中でのプレゼント

どうしようもなく震えてしまう手で受け取って、言われた通りに開けてみる

中に入っていたのは、指輪だった。

宝石こそついてはいないけれど

ホワイトゴールドの……とっても綺麗な……

彼方「これ……っ……」

侑「私の我儘だよ……ほら、言ったよね?」

侑「彼方さんが卒業したら、会える時間が減っちゃうって……一番一緒にいられるのは私じゃなくなるって」

侑「そう考えて、悩んじゃって……どうしよ~って……それで思ったんだ」

侑「この人はもう相手がいるんだって、手を出すなーって、周りに思って貰えばいいんだって」

侑「えへへ……独占欲ってやつなのかな?」

侑「迷惑だったらまた今度、ちゃんとした時に改めて贈らせて貰うけど……」

侑「もし、良かったら……受け取って貰えないかな?」

259: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 18:54:10.48 ID:fc0dsJpx
彼方「ゆ、指輪だよ……?」

彼方「これ……だって……」

少なくとも、数千円の指輪には見えない

そもそもロゴが入っているから違うと分かるけれど

箱だけ買ったわけではないのなら、私でも聞き覚えのある立派なブランドの指輪

それに……それだけじゃなくて。

指輪の贈り物なんて、それは……

侑「……色々あるのは分かってる」

侑「でも、これが私の気持ちなんだ」

侑「好きだよ……彼方さん」

彼方「侑……ちゃん……っ……」

侑「ん……ハンカチ、ちゃんと持ってきてるんだよね~」

侑ちゃんの匂いがする、柔らかいハンカチが私の目元を拭う

優しい感触が、数回触れて。

侑「指に、嵌めてもいいかな」

彼方「侑ちゃん……っ」

侑「も~……名前呼ばれるだけじゃ、分からないよ?」

困ったように笑う、侑ちゃん

拭ってくれていた侑ちゃんの手が指輪を取って……私の左手に嵌めてくれた

260: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 19:12:01.32 ID:fc0dsJpx
互いに大変な事があるって分かっているのに、

それでも侑ちゃんは指輪を送ってくれて……私はそれを受け取った

左手の薬指に感じる、ちょうどいい指輪の感触

今までつけていなかったから、違和感はあるけれど……でも。

彼方「……えへへっ」

早く慣れたいって、思う感覚。

思わず綻んじゃう私を、侑ちゃんは幸せそうに見つめてくる

だから、はっとする。

彼方「あっ……ごめんねぇ……」

彼方「私……こんな立派なお返しできないや……」

侑「彼方さんが喜んでくれたなら……正直、それ以上の物はないんだけど……」

侑「でも……彼方さんがくれるものなら私、なんでも嬉しいよ」

彼方「……あ、後ででいいかなっ?」

こんなもの……って、言っちゃうとあれかもしれないけど

私のプレゼントは、こんな場所で出せるほどの物じゃない

侑「うん……今度、お弁当作ってくれるって約束でも良いよ?」

彼方「ふふっ……それは、いつでもやってあげるよ~」

侑「やった~」

嬉しそうな侑ちゃん

その顔が落胆に変わらないようにってお願いしながら、

もうしばらくレストランで心を落ち着けて……覚悟を決めて……大観覧車のイルミネーションを見に行く

261: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 19:28:34.00 ID:fc0dsJpx
侑「はぁー……っ……」

侑「もう、すっかり冷えてきたね……」

侑ちゃんは白い吐息を手のひらにぶつけながら、呟く

ジョイポリス……アクアシティでのウィンドウショッピング

そして……背伸びした大人っぽいディナー

いつの間にか暗くなっていた外は、空気もひんやり感を増していて……

手を繋ぐ

侑「ん……あったかい」

彼方「……そうだねぇ」

どちらからともなく距離を詰めて、肩が触れる

小さく笑って、寒いからと……腕を組む

侑「合法合法……彼方さんあったか~い……」

彼方「侑ちゃんもあったかいよ~」

寄り添い合いながら、二人で歩く

私達と似た関係の人がだんだん多くなっていく道を……堂々と。

262: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 19:55:04.10 ID:fc0dsJpx
侑「……彼方さん彼方さん!」

侑「ここからでも見えるよ!」

彼方「わぁお……」

カラフルなライトアップが施されている大観覧車

まだ少しばかり遠いけれど、

はっきりと見えて……視線の高さ的にはちょうどいい

すぐ隣で、きらきらと瞳を輝かせる侑ちゃん

でも、少しだけ迷って……バッグの中から小包みを取り出す

彼方「侑ちゃん、これ」

侑「……彼方さんからの、お返し……?」

彼方「うん……」

お店の物じゃない、ラッピング

侑ちゃんはリボンを解いて……袋を開けて

侑「手袋……」

彼方「えへへ……私が編んだんだよ~……?」

彼方「だから……えぇっと……釣り合わなくてごめんね……」

下手に安いものを用意するよりも、

無理して高いものを用意するよりも、

ずっと……喜んでもらえると思った手編みの手袋

けれど、侑ちゃんのプレゼントと比べたら、些細なもので。

侑「ううん……嬉しい」

侑「嬉しいよ……ありがとっ、彼方さん」

でも侑ちゃんは、やっぱり喜んでくれた

263: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 20:02:47.93 ID:fc0dsJpx
侑「して良い?」

彼方「うんっ」

侑「わぁ……いい感じのサイズ……」

さっそく手袋した侑ちゃんは、嬉しそうに手袋に包まれた手を光にかざす。

お店で売っているものと比べられると、質素な手袋

なのに侑ちゃんは嬉しそうで。

私まで……嬉しくなる

彼方「いっつも手を握ってたから……サイズは簡単に分かっちゃったんだ~」

侑「そうだよね……あっ……」

彼方「ん?」

侑「でも、手袋してたら、彼方さんと手を繋ぎにくくなっちゃう」

彼方「じゃぁ……片方だけ外しちゃえばいいよ」

彼方「……一人の時は、両方して」

彼方「一緒の時は、片方だけ」

彼方「どうかな~?」

侑「……うんっ、それがいい」

264: case.5:侑とクリスマスデート(らっかせい) 2020/12/25(金) 20:24:47.50 ID:fc0dsJpx
侑ちゃんは左側の手袋を外すと、私の手を握る

腕を絡ませるような、普通とはちょっと違う親密な手の握り方。

肩を寄せて……近づいて。

侑「……彼方さん」

彼方「なぁに~?」

侑「来年もまた、クリスマスを一緒に過ごしたいね」

彼方「過ごせるよ~……きっと」

阻むものがあったとしても、

私たちの心が変わらなければ、大丈夫

夜道の暗さ、

明かりの少ない影になっているところへと……ちょっぴり入って。

彼方「……今は、これが限界だけど」

侑「んっ……」

唇と唇を触れ合わせるだけの……本当に、まだ始まったばかりだと示すキス。

彼方「……一緒に居よう?」

侑「うん……一緒にいたい」

ほんの少し涙ぐんでいる侑ちゃん

背伸びして……もう一度だけ、軽いキスをする。

来年も、再来年も

これからもずっと一緒に居たいって気持ちを……触れ合わせた

265: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2020/12/25(金) 20:27:13.58 ID:fc0dsJpx
case.5:侑とクリスマスデート 終了

ヒストリ
case1.果林(洋服選び 5-32)
case2.璃奈(菓子作り 45-102)
case3.歩夢(クソゲー 118-151)
case4.菜々(お勉強会 172-206)
case5.侑 (クリスマスデート 213-264)

266: 名無しで叶える物語(らっかせい) 2020/12/25(金) 20:29:19.37 ID:fc0dsJpx
残り(しずく、かすみ、愛、エマ、遥)
次のcaseはまた後ほど

268: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/12/25(金) 20:37:21.51 ID:sBKH16U2
あなたは最高です…!
ゆうかなってこんなに良いのか

269: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/12/25(金) 20:54:07.10 ID:6m5z40Cn
ゆうかなも最高だった!次も楽しみにしてるぞ!

270: 名無しで叶える物語(八つ橋) 2020/12/26(土) 02:51:08.54 ID:uGNEnBKa
流石と言わざるをえない

https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1608125472/